会いにいく
おはようございます、こんにちは、こんばんは。
コロナが再び猛威を奮ってきました。
東京では新規感染者が1000人を超え、私たちが住んでいる神奈川にも確実に迫っている足音が聞こえてきました。また緊急事態宣言が出される事態となるのか。心配ですが、やれることをやるのみです。
今日は先日会ってきた平本美代子さんの話を書こうと思います。
書き出したら止まらなくなり大作となってしまいました。
最後まで読んでいただければ嬉しいです。
平本美代子さんは平本歩さんのお母さん。
36年前、歩さんはミトコンドリア筋症を抱えて生まれ人工呼吸器をつけました。
4歳で退院し、保育園、地域の小学校・中学校・高校と進学し、成人後はほぼ体を動かすことができない中で一人暮らしを実現するなど、前例もなく社会の理解もまだまだない中で懸命に生き抜いた、まさに先駆者でした。
そんな歩さんを育てた美代子さんに会ってお話をうかがってきました。
凄すぎるエピソードの数々
一つ一つのエピソードがすごすぎました。一部を紹介したいと思います。
・ 人工呼吸器を家を売って購入。500万円くらい。
・ ストレッチャー式の車椅子はお父さん自作。
・ 私立保育園に入園。保育士さんに吸引の仕方を教える。歩さんが「◯、✖️」を出す。友達と筆談で喧嘩をする。
・ 登山(登山途中で呼吸器を置いていったことあり)、スキー、スケート、プール、旅行を楽しむ。
・ ボランティアグループ結成。吸引や学校付き添いの代行までする。
・ 快く思わない人からと思われる無言電話を受ける。深夜2時にかかってきたときは、「(父と)交代の時間だったから起きられて良かった」と美代子さん談。
・ バスから乗車拒否を受ける。自宅に来たバスに乗り、乗れることを証明。
・ 航空会社が飛行機に呼吸器を乗せても問題ないか、乗客ない状態で呼吸器を乗せて飛ぶ実験をする。
・ 大学受験を3度挑戦。残念ながら不合格。
・ 美代子さんに伝えず、ヘルパーさんと飛行機で旅行をする。
ごくごく一部です。お話をうかがっていて私は「すごい」を連発してました。
もう他に何も言えなませんでした(笑)。
そして、私が持っていたイメージと実際はかなり違うことに気づきました。
お話をうかがう前は、歩さんのご両親が「すごい」人なのだと思っていました。
実際には歩さんが「すごい」人でした(もちろんご両親もすごい人ですけどね)。
歩さんがどのように生きたいかしっかりとした考えを持って主張し、それを実行してきたんだと。ご両親は歩さんの意志を尊重していたんだと感じました。
本当に素敵な関係だなと感激しました。
おそらく当人たちは自然なことと仰るんでしょうけど、その感じも素敵です。
聞いてみたかったこと
美代子さんへの質問を色々考えていったのですが、どうしても聞いてみたかったのが「人工呼吸器をつけた人が生きる上で一番変わったこと、変わらなかったことは何か?」でした。
そんな質問に美代子さんは
「変わったのは機器」
「変わらないのは人の意識」
と答えてくれました。この答えは重かった。
思わず机に突っ伏してしまいました。
会えて良かった
2時間という時間があっという間に過ぎてしまうほど、多くの話をうかがうことができました。とても貴重なお話ばかりでした。
感じたのは私が制度やシステムに縛られ過ぎているな〜というところ。
サービスや法律が整ってきたこともあってか、視野が狭くなっていました。
作られた仕組みの枠内で考えて、生きていました。
でも違うんですよね。生活に本当は枠なんてないんです。自分で勝手に作っているだけ。
お隣さんやボランティアに頼んでソウマの介助をしてもらったり、学校に付き添いしてもらったり、ついでにマイの相手をしてもらったり(笑)色々できることあるんだろうなあと感じました。
平本さんのご自宅まで、バスで行きました。
バスの運転手さんはソウマのことを全く気にせず、普通に車椅子をバスに固定してくれました。
新幹線も多目的室を借りることができて快適でした。
変わらないところもありますが、歩さんの足跡を感じることができました。
歩さんが懸命に生き抜いて、私たちがいる。
会えなくて、話ができなくて残念だけれども、確かにバトンを受け取りましたよ。
勇気と励ましをいただきました。
たくさんの後輩を見守っていてくださいね。
美代子さんには本当に感謝しかありません。
優しく温かく受け入れていただきました。ソウマにたくさん話しかけてくれました。
出会えて本当に良かったです。
ではでは。
妻からのヒトコト
夫からどうしても直接会って欲しい人がいるんだと2年ほど前から言われていました。とにかくすごいよと教えてくれたエピソードが本当にパワフル。呼吸器をつけたまま飛行機に乗ることや地域での一人暮らしをすることは今でもかなりハードルが高いことだと思っているのですが、それを10年以上前にやっていた方のお母さんだよと。聞いただけでもすごいエピソード満載でした。
今回、直接お会いしてお話してみてやっぱりすごかった。夫と帰り道に「いや、すごいね」と言い続けていました。美代子さんが娘さんと共に地域で生活してきた事実ももちろんすごかった。だけどそれ以上に親の覚悟というか、娘さんのやりたいことを実現させるためにいろいろなことを巻き込む力とか、娘さんの思いを尊重して娘さんならやれると信じる力とか、精神的な力強さを感じました。「歩さんがこう言ってたから」と美代子さんはサラッとお話しされていましたが娘さんの力を信じて他者に任せていくこと、飛行機に乗ったり一人暮らしをさせることは、大きな不安があったと思います。それをやり切った凄さを感じました。
娘を「歩さん」と呼び、一人の人として尊重し、娘のやりたいことを実現させるためにいろいろな支援を作り出していったんだろうなと。それを当たり前のようにサラッとやっていらっしゃるようでした。自分だったら今あるサービスやできることの範囲でやりたいことを考えていますが、美代子さんたちはまずはやりたいことがなんなのか、それをやるためにはどうするかという感じで生活をされていたんだなと。美代子さんも「まずやりたいことが先にあった」とおっしゃっていたのが印象的でした。
直接お会いできてよかったです。夫よ、ありがとう。